歴史
マイカ(雲母)の結晶は、古くはガラスが発見される前に透明板として使用された歴史があり、また電気絶縁材料としても古くから使われてきた天然材料です。
1960年代から1970年代にかけて、カナダ・トロント大学のレイモンド・T・ウッドハム博士が中心となり、マイカフレークの高アスペクト比に注目したプラスチック複合材料の研究が進められ、その高い剛性率が見出されました。それにより面状補強材料としての役割が見直され、応用分野が大きく広がったのです。
特長
フィラー(充填剤)としてプラスチックス、ゴム、建材、製紙など多種多様な分野で利用されるマイカは、その他の無機フィラー同様に下表のような特長を持っています。
機能 | 無機フィラー | |
力学的機能 | 強度 | マイカ、ガラス繊維、炭素繊維、タルク |
寸法安定性 | マイカ、アルミナ、シリカ、クレー、タルク | |
電気的機能 | 絶縁 | マイカ、クレー、タルク、シリカ |
熱的機能 | 耐熱 | マイカ、シリカ、タルク、ガラス繊維、炭素繊維 |
防音・制振機能 | マイカ、鉄粉、鉛、酸化鉄 | |
化学的機能 | 難燃 | マイカ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、三酸化アンチモン、含水珪酸塩 |
耐薬品 | マイカ、アルミナ、シリカ、クレー、タルク | |
耐水 | マイカ、シリカ、クレー、タルク |
また、PBTに混合した場合の、マイカとその他の無機フィラーによる物性変化の違いは下表の通りです。
無機フィラー | – | マイカ | タルク | ワラストナイト | ガラスビーズ | ミルドファイバー | ガラス繊維 |
引張強度(MPa) | 55 | 76 | 58 | 60 | 56 | 60 | 120 |
引張伸び(%) | >200 | 3 | 2 | 3 | 5 | 4 | 3 |
曲げ強度(MPa) | 92 | 130 | 99 | 106 | 105 | 116 | 190 |
曲げ弾性率(GPa) | 2.5 | 8.2 | 6.0 | 4.5 | 4.0 | 4.4 | 8.2 |
衝撃強度(アイゾットノッチ)(J/m) | 45 | 30 | 28 | 30 | 33 | 32 | 82 |
熱変形温度(℃) | 55 | 162 | 150 | 100 | 85 | 120 | 205 |
成形収縮率(MD)(%) | 1.7 | 0.7 | 1.1 | 1.5 | 1.5 | 1.3 | 0.2 |
成形収縮率(TD)(%) | 1.8 | 0.8 | 1.5 | 1.7 | 1.6 | 1.2 | 1.3 |
※無機フィラー混合率30wt%
※<参考文献>大井秀三郎・広田愃著「プラスチック活用ノート 材料選択のための基礎資料集 四訂版」P272